埼玉県公立高校入試は、2027年度(令和9年度)入試より、これまでにない大規模な制度改正が行われます。
その中心となるのが、「原則として全ての公立高校・全ての受検生に対する面接の実施」です。
これまで埼玉県では、面接を実施するかどうかは各高校の裁量に委ねられていました。
そのため、県内トップの進学校である浦和高校や大宮高校など、多くの普通科高校では面接が行われてこなかった歴史があります。
しかし、今後は「学力」や「内申点(数値)」だけでは測りきれない、受験生の「主体性」や「学びの意欲」を直接評価する仕組みへと大きく舵を切ります。
【2027年度~】埼玉県公立高校入試「全員面接」義務化の全貌
なぜ「原則全ての受検生」に面接が課されるのか?
埼玉県教育委員会が掲げる改善の目的は、大きく分けて2つあります。
- 多面的・総合的な評価の実現: 5教科の点数(認知的能力)だけでなく、思考力・判断力・表現力、そして学びに向かう姿勢(非認知的能力)を評価に加えるため。
- ミスマッチの解消: 受検生が自ら志望校の特色を理解し、「なぜこの高校で学びたいのか」を明確にすることで、入学後の意欲向上と中途退学の防止を図るため。
令和8年度以前の制度との決定的な違い
最大の変更点は、面接が「一部の学校のオプション」から「全校共通の必須項目」になることです。
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旧制度(~2026年度): 面接、作文、実技検査の中から、各高校が任意で1つ以上を選択(または実施しない)。
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新制度(2027年度~): 「面接」を全校で実施。さらに、出願時に「入学希望理由書」の提出が必須となる。
対象となる受検生(現在の中学2年生以下)と実施時期
この新制度の対象となるのは、2026年3月現在の中学2年生(およびそれ以下の学年)です。
彼らが中学3年生となり、実際に受検を迎える2027年(令和9年)2月の入試から、この全員面接がスタートします。
面接以外の重要変更点については「令和9年埼玉高校入試日程|親がメモすべき全予定」を確認してください。
評価の仕組みを完全解説|面接は「何点」になり、どう加算されるのか
面接が導入されることで、合否判定の計算式(S値の算出方法)が変更されます。
埼玉県入試において、面接は単なる「参考」ではなく、明確に数値化される得点源となります。
選抜における「3つの柱」:学力・調査書・面接の配点構造
これまでの選抜は「学力検査(当日の点数)」と「調査書(内申点等)」の2本柱でしたが、新制度では「面接」が独立した評価項目として加わります。
選抜で使用される得点(S値)の構成イメージは以下の通りです。
S = 学力検査得点+ 調査書得点+ 面接得点
第1選抜・第2選抜における面接・入学希望理由書の扱い
埼玉県公立入試には、募集定員の一定割合(通常60%〜80%)を決定する「第1選抜」と、残りの定員を決定する「第2選抜」があります。
面接の得点は、両方の選抜において合算されます。
| 選抜段階 | 判定のポイント | 面接の役割 |
| 第1選抜 | 学力:調査書の比率が一般的(4:6〜6:4) | 基礎点に面接の得点を加算 |
| 第2選抜 | 学力検査重視の傾向が強い | 僅差の受検生を面接で逆転・判別する |
多くの学校では第1選抜で内申点を重視しますが、面接の導入により「内申点は高いが意欲が低い生徒」と「内申点はそこそこだが非常に高い意欲を持つ生徒」の間で、順位が入れ替わる可能性が生まれます。
【独自解説】「特別活動の記録」と「面接」の評価の切り分け
ここが最も重要なポイントです。
これまでの調査書(内申書)には、部活動や生徒会活動を評価する「特別活動の記録」という項目がありました。
新制度では、「調査書に書かれた事実(実績)」と「面接でのアピール」が二重に評価されないよう厳密に調整されます。
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調査書: 「部長を務めた」「県大会に出場した」という過去の事実を評価。
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面接: 「その経験から何を学び、高校でどう活かしたいか」という未来への意欲を評価。
つまり、実績がないからといって面接で不利になるわけではありません。
「実績がなくても、高校でのビジョンが明確であれば面接で高得点が狙える」のが新制度の特徴です。
新設「入学希望理由書」の役割と書き方のマスターガイド
全員面接の導入と同時に、受検生全員に提出が義務付けられるのが「入学希望理由書」です。
これは面接の評価と密接に関係します。
入学希望理由書とは何か?(旧・自己PRカードとの違い)
これまでの「自己PRカード」は、あくまで補助的な資料であり、評価に直結しないケースもありました。
しかし、新設される「入学希望理由書」は、面接官が質問を組み立てるための公式な基礎資料となります。
オンライン出願システムとの連動と提出フロー
埼玉県では2024年度からオンライン出願への移行が進んでいます。
令和9年度入試からは、入学希望理由書もオンラインシステム上で入力・提出することが基本となります。
紙の書類を郵送する手間は省けますが、その分、入力内容の推敲をデジタル上で慎重に行う必要があります。
評価を左右する「3つの必須要素」
入学希望理由書に盛り込むべき内容は、埼玉県教育委員会の指針により以下の3点に集約されます。
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志望の動機: なぜ他の高校ではなく、この高校なのか(学校の特色との合致)。
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中学校生活において取り組んだこと: 学習、部活、委員会等で何を得たか。
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高校入学後の学習計画・抱負: 具体的に何を、どう学びたいか。
【学校別】面接の実施形態と評価の重みの予測
全校実施とはいえ、その「重み」は学校のタイプによって異なります。
進学校における面接:学力検査の「1点」と面接の「1点」の価値
浦和、一女、大宮、川越などのトップ進学校では、依然として学力検査(5教科)の配点比率が極めて高いことに変わりはありません。
しかし、合格ライン上に数百人が並ぶこれらの学校では、「学力検査の1点をもぎ取る努力」と同じくらい、「面接で減点を避け、加点を得る準備」の価値が高まります。
実業系・専門学科における面接:適性評価の重要性
工業、農業、商業、看護などの専門学科では、面接の配点が普通科よりも高く設定される傾向があります。
ここでは「技術を学ぶ覚悟があるか」「将来の職業イメージができているか」が厳しく問われます。
学校ごとに異なる「求める生徒像」の確認法
各高校は毎年「選抜基準」を公表します。そこには必ず「求める生徒像(アドミッション・ポリシー)」が記載されています。
面接での評価は、この「求める生徒像」にどれだけ合致しているかを基準に行われます。
自分の長所が、志望校が求めている資質と合っているかを照らし合わせることが、対策の第一歩です。
埼玉県特化型・面接対策|合格レベルの受け答えを作る5ステップ
面接を単なる「おしゃべり」にしてはいけません。
埼玉県公立入試の特性に合わせた戦略が必要です。
埼玉県が提示する「評価の観点」を逆算した回答作り
県教育委員会は、面接の評価観点として以下の例を挙げています。
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主体的に取り組む態度
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論理的な思考・表現
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コミュニケーション能力
これらを証明するためには、「頑張りました」という感想ではなく、「課題に対してどう考え、どう行動したか」という具体的エピソードを回答に組み込む必要があります。
入学希望理由書を「面接の台本」にするテクニック
面接官は入学希望理由書を見ながら質問します。
「理由書に書いたこと」をそのまま繰り返すのではなく、「理由書に書ききれなかった背景」を答えられるように準備しておきましょう。
これができると、「この生徒は自分の考えを深掘りできている」と高い評価を得られます。
想定質問集:必ず聞かれる「埼玉の3大質問」
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「本校を志望した具体的な理由を教えてください」
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「本校に入学したら、どのような学習や活動に力を入れたいですか?」
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「中学校生活の中で、あなたが最も困難だと感じたことと、それをどう乗り越えたか教えてください」
【注意点】保護者・受験生が陥りがちな致命的な誤解
注意点1:面接は「足切り」ではなく「加点・選抜」である
私立高校の入試で行われる面接の多くは、問題行動がないかを確認する「足切り」的な性格が強いですが、埼玉県の公立入試では「点数の積み上げ(加点)」です。
対策をしないことは、試験の1教科を捨てているのと同義です。
注意点2:内申点が高いからといって面接対策を怠るリスク
新制度では、内申点(調査書)と面接は別々に評価されます。
「内申が45だから大丈夫」と油断し、面接で「志望理由が曖昧」と判断されると、逆転を許す可能性があります。
注意点3:私立の「確認面接」と公立の「選抜面接」の決定的な差
併願する私立高校の面接練習だけで済ませてはいけません。
公立高校の先生は、その学校に本当に来たいのか、自校の教育方針に合うのかを真剣に見極めにきます。
注意点4:不登校や欠席日数がある場合の面接の向き合い方
欠席日数がある場合、面接でその理由を聞かれることがあります。
大切なのは「なぜ休んだか」よりも、「現在はどういう状態で、高校からどう頑張りたいか」という前向きな姿勢を面接官に示すことです。
今後やるべきこと|合格を引き寄せる「学年別」行動リスト
中学2年生:自己分析と「学校生活の記録」のストック
今すぐできることは、日常の小さな活動をメモすることです。
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行事でどんな役割をしたか?
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定期テストで点数が伸びなかった時、どう工夫したか?
これらの記録が、1年後の「入学希望理由書」の強力なネタになります。
中学3年生・夏~秋:志望校の「求める生徒像」とのマッチング
夏休みから始まる学校説明会に積極的に参加し、「この学校がどんな生徒を欲しがっているか」を肌で感じましょう。
中学3年生・冬:入学希望理由書の作成と模擬面接
12月から1月にかけて理由書を完成させ、最低3回は模擬面接を実施してください。
まとめ|新制度を「チャンス」に変えるためのマインドセット
全員面接の導入は、受検生にとって新たな壁に思えるかもしれません。
しかし、これは「数値化できないあなたの魅力」を直接高校に伝える唯一のチャンスでもあります。
学力検査や内申点だけで合否が決まる冷たい入試から、対話を通じてあなたの可能性を見出す入試へ。
新制度を正しく理解し、準備を整えた人だけが、第一志望校の門を叩くことができます。
よくある質問(FAQ)
Q1:面接で緊張して言葉に詰まったら減点されますか?
A:いいえ。流暢に話すこと自体が評価の対象ではありません。沈黙が続くのは避けるべきですが、一生懸命に自分の言葉で伝えようとする姿勢があれば、言葉に詰まったことだけで大きく減点されることはありません。
Q2:部活動で実績がないと、面接で話すことがないのでは?
A:そんなことはありません。面接で評価されるのは「実績の大きさ」ではなく「取り組みの姿勢」です。日々の授業への取り組み、趣味の深掘り、家庭での役割など、身近な題材から「主体性」をアピールすれば高評価に繋がります。
Q3:入学希望理由書は、何文字くらい書く必要がありますか?
A:現時点では正式な文字数は発表されていませんが、これまでの自己PRカードや他県の事例を鑑みると、400文字から600文字程度が目安になると予想されます。
Q4:面接の服装は中学校の制服でいいですか?
A:はい。公立高校入試の面接は、中学校の制服で受験するのが標準です。服装の乱れは「態度」として評価に影響するため、正しく着こなすことが重要です。
Q5:面接の結果は開示されますか?
A:埼玉県では、試験結果の開示請求を行うことで、学力検査の得点とともに、面接の評価点も確認できるのが一般的です。






