埼玉県内の現中学2年生とその保護者の皆様、これまでの高校入試の常識はすべて捨ててください。
令和9年度(2027年度)入試から、埼玉県の公立高校入試は「学力検査偏重」から「多面的・総合的評価」へと大きく舵を切ります。
その象徴が「自己評価資料」の導入です。
「自己評価資料」という聞き慣れない名称に、戸惑う方も多いかもしれません。
これは、埼玉県教育委員会が定めた公式名称です。
内容を一言で言えば、「従来の入学希望理由書(志望動機)と、自己PR書(実績のアピール)を一つにまとめた、自分を高校へ売り込むためのプレゼン資料」です。
これまで調査書(内申書)の裏面に記載されていた「特別活動の記録」や「検定・資格」などの加点項目が、令和9年度からは事実上、点数化の対象から外されることになったからです。
つまり、どんなに素晴らしい実績を持っていても、この自己評価資料に戦略的に記載し、それを面接でアピールしなければ、合否判定において「実績ゼロ」と同じ扱いを受ける恐れがあるのです。
本記事では、埼玉県特化のメディアとして、この「自己評価資料」の重要性と、合格を勝ち取るための具体的な書き方を徹底的に解説します。
令和9年埼玉入試の衝撃:調査書の加点が消え「自己評価資料」が合否を握る
英検2級も部長も「書かなければ0点」になる新制度の真実
これまでの埼玉県入試では、調査書に「英検準2級」「部活動県大会出場」「生徒会役員」などの記載があれば、各高校が定めた基準に従って自動的に加点(例:10点〜30点程度)されていました。
しかし、令和9年度からはこの「自動加点」が廃止されます。
英検2級を持っていても、部活動で全国大会に行っていても、それだけで点数がつくことはありません。
それらの実績を通じて「何を学び、高校でどう活かせるか」を、受検生本人が自己評価資料に書き記し、面接での対話を通じて高校側に評価してもらう形式に変わります。
これを「評価の主観化」と呼びます。
実績という「結果」ではなく、そこに至る「プロセス」と「資質」が見られるようになるのです。
なぜ埼玉県は調査書の加点項目を廃止し、自己評価資料を導入したのか
背景にあるのは、文部科学省が進める「学力の三要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)」の適切な評価です。
従来の「英検を持っているから一律○点」という評価では、その生徒がどれほど主体的に学んだかまでは測れませんでした。
埼玉県教育委員会は、生徒が自らの活動を振り返り、言葉にするプロセスそのものを重視することを決定しました。
これにより、目立った実績がなくても、日々の学習や生活の中で「自分で考え、工夫した経験」を持つ生徒が正当に評価されるチャンスが生まれたのです。
合否判定における「資料」と「面接」のセット評価の仕組み
自己評価資料は、単独で採点されるというよりも、受検当日(2027年2月26日)に行われる「全員面接」の基礎資料として活用されます。
多くの高校では、面接の冒頭に設定される「My Voice(1分30秒〜2分程度の自己アピール)」の時間において、この資料に基づいた発表が求められます。
資料の出来が良ければ、面接官(高校の先生)はあなたの強みに興味を持ち、好意的な質問を投げかけてくれます。
逆に、資料が薄ければ、面接官は何を質問してよいか困り、表面的なやり取りだけで終わってしまいます。
提出スケジュールや全体の流れについては、「令和9年埼玉高校入試日程|親がメモすべき全予定」で詳しく解説していますので、必ず併せて確認してください。
【合格NG集】自己評価資料で評価を落す受検生の5つの特徴
自己評価資料を作成する上で、多くの受検生が陥りがちな致命的なミスがあります。
これらは、どれほど偏差値が高くても、評価を大きく下げる原因となります。
NG1:実績の「羅列」だけで終わっている(事実の報告化)
最も多い失敗が、活動実績を箇条書きのように並べてしまうことです。
「私は3年間サッカー部に所属し、県大会に出場しました。また、英検準2級を取得しました。文化祭では実行委員を務めました。」
これでは、高校側は何も判断できません。
県大会に出たことは調査書(事実確認用)を見ればわかります。
資料に書くべきは、「県大会に出るために、チームの課題であった守備の乱れをどう分析し、どのような練習メニューを提案して実行したか」という具体的なエピソードです。
NG2:高校の「アドミッション・ポリシー」との整合性がない
埼玉県内の各公立高校は、令和9年度入試に向けて「どのような生徒を求めているか」というアドミッション・ポリシーを明確に打ち出しています。
例えば、探究活動を重視する学校に対し、「私は先生に言われたことを毎日忠実にこなしました」と書くのは逆効果です。
その学校が「リーダーシップ」を求めているのか、「コツコツとした継続力」を求めているのか、あるいは「グローバルな視点」を求めているのか。
志望校のカラーに自分を合わせる「戦略的記述」が不可欠です。
NG3:保護者の影が見えすぎる「洗練されすぎた言葉」
「不退転の決意で臨んだ」「看過できない課題を止揚し」といった、15歳の中学生が日常使わないような難しい語彙が並ぶと、即座に「保護者が書いたもの」と見抜かれます。
代筆が疑われると、面接での質問が非常に厳しくなり、本人の言葉でないことが露呈した瞬間に不合格のリスクが高まります。
大切なのは、中学生らしい誠実な言葉で、論理的に構成することです。
NG4:具体的な「数字」や「エピソード」が欠けている
「一生懸命練習しました」「たくさん勉強しました」といった抽象的な表現は、評価対象になりません。
「朝練の開始時間を15分早め、個人の苦手克服に充てた」「単語帳を3ヶ月で5周繰り返し、語彙力を1,000語増やした」など、第三者が状況をイメージできる具体的な数字やエピソードを盛り込みましょう。
NG5:面接の「My Voice(自己アピール)」と内容が乖離している
資料に書いた強みと、当日の面接で話す強みが異なると、評価者は混乱します。
「資料では粘り強さをアピールしているのに、口頭では明るさをアピールしている」という状況では、一貫性がないとみなされます。
自己評価資料は、あくまで2月の「全員面接」の台本であることを忘れてはいけません。
面接については「全員面接が義務化|埼玉高校入試の評価基準と対策」をチェックしてください。
【徹底比較】令和8年度までと令和9年度からの「評価基準」の違い
新制度がいかに劇的な変化であるかを理解するために、従来の制度と比較してみましょう。
調査書加点欄の廃止と自己評価資料への移行まとめ
| 項目 | 令和8年度まで(旧制度) | 令和9年度から(新制度) |
| 評価対象 | 調査書(内申書)の加点欄 | 自己評価資料 + 全員面接 |
| 評価の性質 | 客観的(実績があれば点数化) | 主観的(プロセスと資質を評価) |
| 英検等の扱い | 級に応じて自動加点 | 取得までの努力と活用法を記述 |
| 部活動の扱い | 成績(県大会等)で自動加点 | 困難への向き合い方を記述 |
| 合否への影響 | 調査書点の一部として加算 | 面接点および総合評価に直結 |
評価される「エピソード」のBefore / After
| 題材 | 評価の低い書き方(Before) | 評価の高い書き方(After) |
| 英検準2級 | 「将来のために準2級を取りました。頑張りました。」 | 「語彙不足を克服するため、毎日20単語を就寝前にテストし、3ヶ月継続して合格しました。」 |
| 野球部部長 | 「部長としてチームをまとめ、県大会に出場しました。」 | 「部員の練習への意識の差を埋めるため、週に一度のミーティングを導入し、全員の目標を共有しました。」 |
| 美化委員 | 「委員として毎日教室を掃除し、きれいにしました。」 | 「掃除用具の配置を工夫し、清掃時間を3分短縮することで、終学活の議論の時間を確保しました。」 |
この比較からわかる通り、令和9年度からは「結果の大きさ」よりも「課題をどう発見し、どう動いたか」という知的なプロセスが評価の対象となります。
合格を引き寄せる自己評価資料の「構成案」と4つのステップ
実際に資料を作成する際の、黄金のステップを解説します。
ステップ1:志望校が求める生徒像(キーワード)の徹底分析
まずは志望校のHPや「選抜基準」の資料を読み込みます。
そこに並んでいる言葉を抜き出してください。
「主体性」「創造性」「地域貢献」「文武両道」など、学校が大切にしている価値観が必ずあります。
その言葉を自分の資料の中に「意図的に」組み込むことが、合格への最短距離です。
ステップ2:3年間の「経験」を「資質・能力」に変換する棚卸し
次に、自分の3年間を振り返ります。
ここで重要なのは、実績がないと悩まないことです。
「計算ミスを減らすために計算用紙の使い方を変えた」というエピソードでも、「論理的な思考力」や「自己管理能力」としてアピール可能です。
自分の行動を、「高校が欲しがる能力」の名前に読み替える作業を行いましょう。
ステップ3:結論から書く「プレゼン型」の文章構成術
文章は必ず「結論(私の強み)」から書き始めます。
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結論:私の強みは、困難に対して改善策を考え、実行する力です。
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根拠(エピソード):中学2年の合唱祭で、パートの音が合わなかった際、私は録音した音源を全員で聴く時間を提案しました。
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分析と成果:客観的に聴くことで課題が明確になり、結果として金賞を受賞できました。
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高校での活用:この分析力を、貴校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の探究活動で活かしたいです。
このように、最後に「高校でどう活かすか」を具体的に結ぶことで、評価者の印象に強く残ります。
ステップ4:面接での深掘りを想定した「あえて残す余白」の作り方
すべてを資料に書ききってはいけません。
「具体的な練習メニューの内容については、当日の面接で詳しくお話ししたい」というニュアンスを含ませることで、面接官が質問しやすくなります。
資料は「面接の呼び水」であるという意識が、合格者には共通しています。
【分野別】評価を上げるための記述例文とポイント
部活動・スポーツ編:結果よりも「課題解決のプロセス」を示す
スポーツ推薦ではなく、一般の学力検査で受検する場合、高校側はあなたの「運動能力」ではなく「部活動を通じて得た学び」を見ています。
たとえ補欠であっても、「チームのために自分ができる役割(分析、声かけ、準備)をどう見つけたか」というエピソードは、レギュラーの実績だけの文章よりも高く評価されることがあります。
検定・資格(英検・漢検)編:取得の「動機」と「活用方法」を盛る
前述の通り、資格は持っているだけでは加点されません。
「海外のニュースに興味を持ち、自分の言葉で理解したいと考え、準2級に挑戦した」という動機や、「取得した語彙力を活かして、現在は洋書を読んでいる」といった「現在進行形の学び」を記述してください。
これは、学習指導要領で重視される「主体的に学習に取り組む態度」の強力な証明になります。
委員会・生徒会・行事編:組織の中での「自分の役割と変化」を強調
役職名に頼ってはいけません。「会長だからすごい」のではなく、「会長として、反対意見を持つ生徒とどう対話したか」が重要です。
組織の中で摩擦が起きたとき、あなたがどう動いて、組織や自分がどう変化したか。
その「変容」のプロセスが、高校での集団生活への適応力を示す材料になります。
注意点:自己評価資料を作成する際に保護者が絶対に守るべきマナー
この新制度において、保護者の関わり方は非常にデリケートです。
代筆は「面接」で必ず露呈する:親ができるのはコーチングのみ
親が良かれと思って整えた文章は、面接で「なぜその言葉を選んだの?」と聞かれた瞬間に崩壊します。
保護者の役割は、子供の記憶を呼び起こすための「聞き役」に徹することです。
「あの時、何に困ってた?」「どうやって解決したっけ?」と問いかけ、子供から出てきた言葉をメモしてあげてください。
その言葉の欠片を繋ぎ合わせるのが、本来の自己評価資料です。
修正液・誤字脱字・提出期限:事務的なミスが熱意を削ぐ
令和9年度から導入されるWeb出願システムでは、資料をデータでアップロードする場合と、郵送・持参する場合があります。
どちらの場合も、誤字脱字は「確認不足=志望度が低い」というメッセージとして受け取られます。
また、提出期限は1分でも過ぎれば失格です。
スケジュール管理は保護者の最大のサポート項目となります。
次にやること:資料を「面接」の台本に昇華させるロードマップ
12月の三者面談までに「骨子」を固めるべき理由
多くの中学校では、12月の三者面談で公立の志望校を確定させます。
この時、担任の先生に自己評価資料の「骨子(何をアピールするか)」を伝えておくと、先生も調査書(総合的な学習の記録)との整合性を取りやすくなります。
早めに動き出すことが、学校側の協力を得るコツです。
2月26日の全員面接に向けた「My Voice」の練習開始
資料が書き上がったら、それを1分30秒で話す練習を始めてください。
「資料に書いてあることをただ読む」のではなく、「資料を補足するように話す」のが理想です。
この「My Voice」の対策については、別記事「全員面接が義務化|埼玉高校入試の評価基準と対策」で詳細なトレーニング法を公開しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 英検などの実績が一つもないのですが、不利になりますか?
いいえ。令和9年度からの制度は、目に見える実績がない生徒を救い、その「ポテンシャル」を評価するためのものです。日々の授業での工夫、家庭での習慣、友人関係で大切にしていることなど、身近な題材を深く掘り下げることで、英検保持者以上の評価を得ることは十分に可能です。
Q2. 自己評価資料の内容が原因で不合格になることはありますか?
資料の内容だけで即不合格になることは稀ですが、「面接点」を大きく下げる要因にはなり得ます。また、ボーダーライン上の争いになった際、資料の内容が優れている生徒が優先的に合格となるため、軽視は禁物です。
Q3. 私立高校の「確約(個別相談)」でも、この資料は使えますか?
はい、非常におすすめです。私立高校の先生も、令和9年度からの公立新制度を強く意識しています。12月の個別相談に、作成途中の自己評価資料を持参して見せることで、「公立への意欲」と「自己分析力」を高く評価され、確約の獲得に有利に働くケースが多いです。
Q4. 箇条書きで書いても良いですか?
フォーマットによりますが、原則として「文章形式」で書くことが望ましいです。理由や背景、展望を論理的に繋げる必要があるため、箇条書きでは情報の厚みが伝わりにくいからです。
Q5. 文章が苦手な子供に対して、どこまで親が手を出して良いですか?
構成案の作成(起承転結の整理)までは手伝っても構いません。しかし、具体的な文章表現、特にエピソードの描写は必ず子供の言葉を使わせてください。子供が書いた文章に対して「ここをもっと具体的にして」とアドバイスする程度に留めましょう。
まとめ:自己評価資料で「逆転合格」を掴み取る10の鉄則
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調査書の自動加点が廃止された令和9年入試では、この資料が唯一の加点手段。
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実績の「羅列」は評価0点。必要なのは「プロセス」と「課題解決」の記述。
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志望校の「アドミッション・ポリシー」にあるキーワードを必ず盛り込む。
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「頑張った」などの抽象語を排し、具体的な「数字」と「エピソード」で語る。
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結論から書き始め、最後は必ず「高校での活用・貢献」で結ぶ。
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2月26日の全員面接の「台本」としての役割を意識して作成する。
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面接冒頭の「My Voice(自己アピール)」との一貫性を死守する。
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保護者は代筆せず、子供の言葉を引き出す「コーチ」に徹する。
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事務的なミス(誤字脱字、期限遅れ)は熱意不足とみなされるため厳禁。
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内申点が足りない受検生ほど、この資料を「自分という人間」を売る武器にする。






