調査書から消える加点?令和9年埼玉入試の正体

令和9年度(2027年度)から、埼玉県公立高校入試は「戦後最大」とも評される劇的な制度変更を迎えます。

その中でも、受験生や保護者の皆様に最も大きな動揺を与えているのが「調査書における加点制度の原則廃止」です。

これまで埼玉県の公立入試では、学力検査(当日点)と調査書(評定)に加え、部活動の成績や英検などの資格が「特別活動の記録」や「その他の項目」として数値化され、合否に加算されてきました。

「県大会出場なら10点加点」「英検準2級なら5点加点」といった、計算可能なメリットが存在していたのです。

しかし、令和9年度入試からは、これらの一律の点数化が廃止されます。

この記事では、この「加点廃止」の正体と、これからの受験生が合格を勝ち取るための真の対策をどこよりも詳しく解説します。

令和9年度埼玉県高校入試「調査書加点廃止」の衝撃と真実

まず、正確な情報を整理しましょう。

埼玉県教育委員会が発表した最新の実施計画によると、令和9年度入試から「調査書の『特別活動の記録』及び『その他の項目』については、得点化を行わない」ことが決定しました。

これは、入試の合否判定に用いられる数式から、これまでの「加点枠」が完全に消滅することを意味します。

しかし、重要なのは「実績が評価されなくなる」のではなく、「評価の土俵が数値から言語へと変わる」ということです。

埼玉県教育委員会が目指す「多面的・総合的評価」の本質

なぜ、これまでの分かりやすい点数化を廃止するのでしょうか。

その背景には、点数という「結果」だけを追い求める内申対策からの脱却があります。

これまでは「加点が欲しいからボランティアをする」といった、手段と目的が逆転した現象も見られました。

また、部活動の実績は、学校の規模や指導者の有無、家庭の経済環境に左右される側面が強く、公平性に欠けるという指摘もありました。

新制度では、結果(点数)だけを見るのではなく、「その活動を通じてどのような資質・能力を身につけたか」というプロセスを評価することを重視しています。

これは、大学入試改革の流れを汲んだ、より本質的な人間力を問うための改革なのです。

数値化がなくなる「特別活動の記録」と「その他の項目」の具体的な中身

では、具体的にどのような項目が「得点化」の対象から外れるのでしょうか。

これまでの調査書(内申書)の裏面に記載されていた、ほぼすべての項目が該当します。

これまで加点対象だった部活動・生徒会・検定の一覧

現行制度(令和8年度入試まで)において、多くの学校で加点対象となっていたのは以下のような項目です。

  • 特別活動の記録:生徒会役員(会長・副会長)、学級委員長、部活動の実績(県大会・全国大会出場)、部長経験、行事実行委員など。

  • その他の項目:英検・数検・漢検などの資格、ボランティア活動、皆勤、海外派遣経験など。

これまでは、学校ごとに「最大80点」といった枠の中で、これらの実績が自動的に足し算されていました。

令和9年度からは、これらを調査書に記載する欄は残りますが、その横に「得点」が書き込まれることはありません。

なぜ「一律の点数化」が不公平とされ廃止されたのか

埼玉県内には、部活動が非常に盛んなマンモス校もあれば、部員不足で大会出場すらままならない小規模校もあります。

また、クラブチームでの活動が調査書に反映される度合いも、市町村によって差がありました。

「環境によって得られる点数が違う」という状況は、公立高校入試としては是正すべき課題でした。

数値化を廃止することで、環境の差を埋め、本人がその環境下でいかに主体的に行動したかを評価する方向へと舵を切ったのです。

加点に代わる最重要要素「自己評価資料」と「面接」の関係性

加点という「点数」が消える代わりに導入されるのが、令和9年度入試の最重要キーとなる「自己評価資料」と「全員面接」です。

自己評価資料は採点されないが、面接の「種」になる

自己評価資料とは、受検生本人が自身の活動実績や、そこから得た学び、高校生活への抱負などを記述し、出願時に提出する書類です。

重要なのは、この資料自体に点数はつかないという点です。

埼玉県教育委員会は「自己評価資料そのものは評価せず、面接の際に参考とする」と明記しています。

つまり、これまでの加点項目は、この資料の「根拠」として機能し、面接を通じて評価されることになります。

例えば、英検準2級という事実を、ただの数字としてではなく「中学2年生から毎日30分のリスニング学習を継続し、目標を達成した継続力がある」という自分の強みの証明として語るための素材にするのです。

ボーダーライン上の合否を分ける「人間性」の評価軸

では、採点されないなら意味がないのかというと、全く逆です。

選抜の最終段階で「当日点と評定がほぼ並んだ受検生」が複数いた場合、面接での評価が「どちらを合格させるか」の最終的な判断基準となります。

資料が薄ければ面接の内容も薄くなり、結果として評価が低くなるという連鎖が起こります。

自己評価資料のより具体的な書き方については、「自己評価資料の書き方|埼玉高校入試の合格NG集」で詳しく解説していますが、この資料が加点に代わる「実質的な逆転の切り札」になることを理解してください。

令和9年度からの新しい選抜枠組み「共通選抜」と「特色選抜」とは

令和9年度入試からは、従来の第1次・第2次選抜という呼び方に加え、制度として「共通選抜」と「特色選抜」という枠組みが定義されます。

第1段階「共通選抜」での調査書の役割

共通選抜は、すべての公立高校で行われる標準的な選抜です。

ここでは、学力検査(5教科)の得点と、調査書の評定(通知表の数字)、そして面接の評価が組み合わされます。

加点がない分、ここでの調査書の役割は「純粋な評定(1から5の数字)」の比重が極めて高くなります。

日々の定期テスト対策が、これまで以上に合否を直結する要素となります。

第2段階「特色選抜」で評価される個性と実績

特色選抜(従来の第2次・第3次選抜に近いもの)では、高校が独自に評価比率を設定できます。

ここで「部活動の実績」や「特定の検定」をより重視したい学校は、それらを面接の評価項目として重く扱うことが予想されます。

全員面接が義務化|埼玉高校入試の評価基準と対策」でも詳述していますが、上位校ほど、この特色選抜において「数字では測れない資質」を見極めようとする傾向が強まります。

マークシート導入と「国語の作文廃止」が調査書評価に与える影響

学力検査の形式変更も、調査書の評価の重みに間接的な影響を与えます。

筆記試験から「記述」が消え、表現力の場が調査書へ移行

令和9年度から学力検査がマークシート方式になることに伴い、国語の「400字程度の作文」が廃止されることが決定しました。

これは受検生にとって、筆記試験での「記述による自己表現」の機会が失われることを意味します。

その結果、受検生の思考力や表現力を測る唯一の場が、出願時の「自己評価資料」と当日の「面接」に集約されることになります。

マークシート導入|令和9年埼玉入試の得点戦略」で解説している通り、筆記試験が効率化される分、調査書に関連する「人間力」の評価が相対的に高まると考えるべきです。

学校ごとに異なる内申比率:1:1:1から1:1:3までの選択制を解説

加点制度が廃止される一方で、通知表の数字(評定)を何倍にするかというルールは存続します。

中3の成績が3倍?学校が選ぶ3つの評定比率パターン

埼玉県では、中1・中2・中3の評定比率を、各高校が以下の2つのパターンから選択します。

  • 1:1:2(中3を2倍に評価):上位校に多い

  • 1:1:3(中3を3倍に評価):中堅校以下に多い

加点という「後からの足し算」ができなくなった今、この比率計算による持ち点の重みは、旧制度よりも物理的に増しています。

加点が消えた分、通知表の「1点」の重みが物理的に増す

例えば、これまでは英検準2級を持っていれば「内申の1点か2点の不足」を加点でカバーできました。

しかし令和9年度からは、そのカバーが「数値」としては不可能です。

中3の評定で「4」を「5」に上げることが、合否判定における最も確実なスコアアップになります。

【比較表】旧制度と新制度の選抜構造・評価軸の徹底対照

受検生と保護者の皆様が、具体的に何が変わるのかを視覚的に理解できるよう、比較表を作成しました。

選抜要素と点数化の有無

選抜要素 旧制度(~令和8年) 新制度(令和9年~)
学力検査(5教科) 500点(記述あり) 500点(マークシート・国語作文廃止)
評定(通知表) 数値化(1:1:3等) 数値化(1:1:3等)
特別活動・検定 数値として加点(○点) 得点化しない(資料・面接で評価)
自己評価資料 なし 全員提出(面接の参考資料)
面接 一部の学校のみ 全員実施(共通選抜・特色選抜)

受験生タイプ別の有利・不利の変化

受験生タイプ 旧制度での立ち位置 新制度での立ち位置
実績型(検定・部活豊富) 加点で当日点のミスをカバー 実績を「言語化」できないと宝の持ち腐れに
学力特化型(実績少なめ) 加点がない分、不利な場合も 加点差が消えるため、当日点と評定で勝負可能
内申美人型(役職は多い) 加点で合格を勝ち取りやすい 面接での深掘りに耐える「中身」が必須

表の読み方と分析

これまでは、実績がある生徒は「下駄を履かせてもらえる」状態でした。

しかし新制度では、全員が同じ数値のスタートラインに立ちます。

実績がある生徒は、それを「なぜ達成できたか」という根拠として使うことで有利になりますが、ただ実績があるだけ(=語れない)では評価されにくくなります。

入試改革の全体像は「令和9年埼玉高校入試日程|親がメモすべき全予定」をチェックしてください。

【注意点】これだけはNG!加点廃止への対応でやりがちな3つの失敗

制度が変わる時期は、誤った思い込みが不合格を招きます。

誤解1「実績がなくても当日点だけで逃げ切れる」

加点がなくなったからといって、当日点だけで合否が決まるわけではありません。

埼玉県入試では、依然として「調査書」と「当日点」の比率が4:65:5、学校によっては6:4で設定されます。

加点枠が消えた分、相対的に「評定(1から5の数字)」の配分が大きくなっているため、当日点だけで逆転するのは以前よりも難易度が上がっていると見るべきです。

誤解2「部活や検定を辞めて勉強時間に全振りする」

「点数にならないなら部活は無駄」という考えは、新制度においては致命的な戦略ミスです。

面接官が最も見たいのは「困難にどう向き合ったか」です。

3年間続けた部活動での葛藤や、検定試験に向けて試行錯誤した学習計画こそが、面接での高評価を生みます。

実績(点数)を捨てるのではなく、ネタ(素材)を捨てることの恐ろしさを自覚しましょう。

誤解3「自己評価資料は保護者が代筆する」

「子供が書けないから」と保護者が立派な文章を書いてしまうのは逆効果です。

面接は自己評価資料をベースに行われます。

大人の言葉で書かれた資料と、中学生自身の口から出る言葉にギャップがあれば、即座に見抜かれ、誠実性や主体性の評価を大きく落とすことになります。

令和9年度入試で勝ち残るために「今すぐ着手すべき」新・受験戦略

変化をチャンスに変えるために、今すぐ以下の2点に取り組んでください。

中1・中2からの「体験と内省」のポートフォリオ作り

今日から「自分が何をして、どう思ったか」をメモする習慣をつけてください。

「今日の部活で、後輩への教え方を変えたら上手くいった」

「数学のケアレスミスを防ぐために、見直しの順番を決めた」

こうした日常の小さな改善(内省)の積み重ねが、中3で自己評価資料を書く際の強力な武器になります。

自分を客観的に分析し「言語化する」トレーニング

マークシート化によって筆記試験の記述が減る分、あなたの「考え」を伝える場は対面(面接)へと移りました。

夕食の時に「今日一番印象に残ったニュースは何?」「それはなぜ?」といった問いかけを家族で繰り返すだけでも、面接で必要とされる「思考の言語化力」は飛躍的に向上します。

埼玉県高校入試の調査書変更に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 英検3級しか持っていませんが、書かないほうがいいですか?

A. 必ず書いてください。

「加点」という点数にはなりませんが、「中学卒業レベルの英語力を身につけるために、いつ、どんな計画で勉強したか」を自己評価資料に記すことで、あなたの学習意欲の証明になります。

級の高さよりも、その過程でのあなたの成長が評価の対象です。

Q2. 調査書の「加点廃止」は私立高校にも影響しますか?

A. 直接的な影響はありませんが、間接的な変化が予想されます。

埼玉県の私立高校の多くは独自の「確約(入試相談)」基準を持っています。

公立高校が面接や資料を重視する方向に動けば、私立高校も「数字だけでは測れない資質」を評価に取り入れる動きを強める可能性があります。

Q3. 「不登校」だった時期がある場合、自己評価資料はどう書けばいいですか?

A. 不登校そのものが不利になるわけではありません。

その時期に自分なりにどのように学びに向き合い、現在どのように高校生活への意欲を持っているかを前向きに記すことができます。

Q4. 国語の作文がなくなるなら、文章の練習は不要ですか?

A. むしろ、より重要になります。

筆記試験としての作文はなくなりますが、自己評価資料という「自分を売るための文章」を数千字単位で練り上げる必要があります。

「書く力」は、試験会場ではなく、出願前の準備期間に最大限試されることになります。

Q5. 加点廃止で、結局何に一番力を入れればいいですか?

A. 優先順位は「1. 通知表の評定(内申点)」「2. 5教科の基礎学力」「3. 自己評価の材料作り」です。

数値として残る「評定」と「当日点」を固めることが大前提であり、その上で面接による「最後の一押し」を準備するのが王道です。

まとめ:調査書加点廃止後の埼玉入試を攻略する10のポイント

  • 加点の数値化廃止:令和9年度から、特別活動や検定の一律な点数加算は消滅する。

  • 自己評価資料の導入:実績は点数ではなく、資料の「根拠」として活用される。

  • 全員面接の義務化:資料に基づいた面接が、合否を分ける第3の評価軸になる。

  • 共通選抜と特色選抜:選抜枠組みが整理され、各校の特色に合わせた評価が行われる。

  • 国語の作文廃止:筆記試験から記述が減る分、表現力の評価は調査書・面接へ移行する。

  • 評定比率の重要性:1:1:3などの比率により、中3の評定の重みが物理的に増す。

  • 検定は「自律学習」の証:取得プロセスを語ることで、主体的に学ぶ姿勢をアピールできる。

  • 部活動は「逆転のネタ」:3年間の継続や克服の経験は、面接において最高の武器になる。

  • 言語化力の育成が急務:自分の考えを論理的に説明し、文章にする日常の訓練が不可欠。

  • 最新の選抜基準を確認:学校ごとに異なる「資料と面接の比重」を必ずチェックする。